子供を増やすには?問題解決の手法で「少子化対策」を考察
皆さんは少子化対策と聞いて、どんな案を思い浮かべますか?
結婚する機会の増加?、不妊治療の補助?、子育て環境の整備?
それぞれの立場での考えをお持ちだと思います。
当記事では少し大きなテーマですが、少子化対策について問題の所在を探し出し、自治体や国として取り組める効果的な対策を立案していきます。
- 未成年のお子さんをお持ちの方
- 日本の将来に関心がない方
- 自治体の運営に関わる方
コロナショックにおいて、子供の出産をためらう方も増えていると思います。
今後の政府への期待も込めて対策を考えてみましょう。
結論だけ知りたい方は目次から最後に飛んでください。
問題解決の手順や陥りやすい注意点はこちらの記事に記載してあります。
まず、こちらに目を通していただけると、当記事の内容も理解しやすいと思います。
問題の明確化(What)
まずは問題の明確化をしてみましょう。
日本全体の発展という点なので、一個人の私が理想を定義するのはおこがましいですが、ここでは以下のように立ててみます。
当然ながら、問題は「産まれる子供が少ないこと」にあります。
実際に日本では2019年の出生率は1.36と人口を維持する2.08を下回り、人口の減少の段階にあります。
このままでは日本は衰退し続けることが危惧されていますよね。
そこで、今回は「産まれてくる子供を増やすには?」という問題について分析してみます。
※)亡くなる人が多いという問題も挙げられますが、それは戦後ベビーブームの世代が高齢化してきたためです(参照:こちら)。ここでは未来を担う子供たちを増やすことに着目して解析していきます。
問題箇所の特定(Where)
続いて、産まれる子供が少ない原因がどこにあるのか、探してみましょう。
今回は目的である「出産」について着目してみます。
出産までの流れは以下の図で表現できますよね。
一部、前後する方もいますが、一般的にはこの流れです。
この過程において、どこに問題があるのか?を考えてみます。
ここで、以下のグラフをご覧ください。これは日本の世帯の構成人数の推移を示したグラフです。(政府統計を基に筆者作成)
「結婚しない人が増えている」と言われるように1人世帯(橙)が増えています。
それと同時に2人世帯(黄)、3人世帯(緑)が増加していることから、結婚するけど、子供を作らない家庭、もしくは一人しか出産しない家庭が増えていることも確認できます。
そのため、先ほどの少子化対策には結婚と出産両面に着目することが必要だとわかりますよね。
原因の追究(Why)
では結婚と出産のそれぞれについて原因を探っていきます。
結婚しない理由
まずは結婚しない理由の調査結果を以下に載せます。
これは未婚者に対し、結婚していない理由を質問した結果をまとめています。
男性
1位 適当な相手にめぐり合わないから(55.4%)2位 結婚後の生活資金が足りないから(35.6%)3位 結婚資金が足りないから(31.6%)4位 自由や気楽さを失いたくないから(29.2%)5位 必要性を感じないから(24.7%)女性
1位 適当な相手にめぐり合わないから(58.8%)2位 自由や気楽さを失いたくないから(36.9%)3位 必要性を感じないから(32.3%)4位 趣味や娯楽を楽しみたいから(23.5%)5位 結婚後の生活資金が足りないから(22.9%)(参照:内閣府)
男女ともに1位は「出会いの問題」を挙げています。
しかし、それ以外の項目から男性は資金面の悩みが多く、女性は自分を大切にしたいという気持ちを持っていることが分かります。この点は男女の価値観の違いと言えるかもしれません。
この対策として結婚希望未婚者は「雇用機会」や「賃金」、「職場環境」の充実を求めています。これは、国や自治体というより、就職先の企業の取り組みに依存する部分が多いでしょう。
婚活パーティーなどの出会いの場を提供するといった取り組みも徐々に浸透しているので、国に頼らず、浸透していくことを期待しています。
子供を作らない理由
では、子供を作らない原因は何でしょうか?
内閣府の調査結果では夫婦に尋ねた理想の子供数は2.32人です。一方、予定子供数(現在の子+今後産む予定の子)は2.01人です。(参考:平成30年内閣府)
このギャップ、つまり理想の子供人数を持たない理由については以下のような調査結果が出ています。(平成30年内閣府を参照し、筆者作成)
ダントツで子育ての費用が影響していることがわかります。
学費だけでも大学卒業までに1000万円~3000万円が必要と言われていますので、それだけでも経済的に負担となることがわかりますよね。
※)なお、この調査は夫婦への調査なので、片親のご家庭の感じるセーフティーネットの充実や子供の育つ環境が整っていないという意見は少数になってしまうことをご理解ください。
お金以外の問題点
この他の点で注目したいのは家族の協力という点です。
政府の進めている男性の育児休暇の義務化なども割合は少ないものの、「夫の協力が得られない」、「仕事に差し支える」という点で効果が得られると思います。
男性育休はこちらのサイトに詳しく記載されています。経験談含めて非常に役に立ちますよ。
また、政府が検討している不妊治療の保険適用は「高年齢で産むのは嫌だ」、「欲しいけれどもできない」という点に着目していますが、最も大きいのは子育てにかかる費用なので、効果は限定的になると考えられます。
ここまでの結果から、産まれてくる子供が少ない原因は子育て費用の問題が大きいことがわかりました。
解決案の立案(How)
最後に少子化対策の対策を考えます。
ここで最初に立てた解決すべき問題に立ち返ってみます。
「産まれてくる子供を増やすには?」でしたよね。それに対して個人での対策は限度があります。
そこで政府として進めている施策について考えてみましょう。
結婚を増やす施策
結婚を増やすには先ほど触れたように出会いの場として婚活パーティーや結婚相談所のイメージ向上や認知度アップなどの方法が考えられます。
また、企業の賃金アップや効率的な業務によるプライベートの充実なども合わせて進めることで、生活にゆとりを持たせることも重要だと思います。
この点は働き方改革を推し進める中で、改善が図られることを期待しましょう。
政府の子育て支援策
出産に関しての調査から、少子化対策には子育て費用に対する不安を取り除くことが重要であることが分かります。
そこで、いくつか国の検討中の施策を交えて子育て費用の捻出について考えてみましょう。
以下に一例を示します。
- 児童手当
- 幼児教育・保育の無償化
- 高等教育の修学支援
しかし、児童手当は月1万円、3人目以降は1.5万円です。
幼児教育や高等教育を支援しても、数百万というレベルの支援なので、子供を産みたくなるほどのインパクトが弱いという印象です。
児童手当は2010年から支給されていますが、その後の出生率に変化が見られません。先ほどの理想の子供の数を持たない理由は2015年の統計を基にしていますので、児童手当て支給後5年経過した段階でも、「お金が足りない」というのが皆さんの本音だと思います。
実際、政府の子育て支援の評価は全体では「質・量ともに十分ではない」と6割以上の方が回答しています。(参照:令和元年内閣府)
今の児童手当などは一人当たり200万円なので、学費で1000万円~3000万円とひかくすると、それでは足りないということですね。
インパクトのある施策とは?
そこで日本政府として取り組める制度について触れていきます。
過去に話題となった案も含めて、挙げていきますね。
施策①児童手当増額
今支給されている児童手当を増額するという方法です。
といっても社会保障制度はそのまま残るので、増額する額には限度があります。
また、政府はそもそも、2022年10月支給から年収1200万円の家庭に対し、児童手当を廃止する方向で検討しているので、実現可能性は低いでしょう。
施策②第3子に1000万円
人口を増やすためには、1つの夫婦が3人以上の子供を産む必要があります。
その3人目の出産を促すために、第3子に1000万円を支給する方法が有効と考えられていました。
個人的には面白い策だと思いますが、この案も2018年に出されて以降、進展が見られないという点で政府として動きにくいと考えられます。
例えば、こんなことが容易に想像できます。
- 養子ならどうするか?
- どのタイミングで1000万円を給付するのか?
- 児童手当目的の出産への対策は?
これらの難題も多いことから、見送られたということでしょう。
施策③ベーシックインカム
最後に挙げるのがベーシックインカム。国民一人につき、一定の金額を支給する代わりに社会保障制度を廃止するというものです。
現在の案である月7万円とした場合、22歳の大学卒業までに1800万円支給されるので、学費もカバーできますよね。また、先ほど触れた結婚しない理由の経済的な理由も解消につながる施策と言えるでしょう。
もちろん、導入には様々な課題あります。
お金欲しさに子供を産む方もいるかもしれません。国の奴隷になる、と警鐘を鳴らす方もいます。働かなくても良いので、人的資源に頼る企業の倒産が相次ぐかもしれません。
しかし、個人的にはこれほどの制度を導入しないと、子育て費用の問題は解決されず、少子化対策にはならないと感じています。
お金をクリアにすれば子供は増える?
最後にお金の支援をすれば、子供は増えるのか?という点について触れておきます。
自治体レベルでは岡山県奈義町の取り組みが有名です。町の試算ですが、2014年では合計出生率2.81と全国平均の2倍という驚異的な数字を出しています。
奈義町の独自の施策は以下の通り(参照:奈義町/奈義町子育て応援宣言)。
- 出産祝い金(第1子10万円、第2子15万円、第3子20万円、第4子30万円、第5子以降40万円)
- 高等学校等就学支援(生徒一人当たり年額9万円を3年間支給)
- 不妊治療助成(費用の2分の1以内で、年20万円を限度に通年5年間助成)
- 在宅育児支援手当(満7カ月児~満4歳で入園していない児童一人につき月額1万円支給)
- ワクチン接種の助成
- 18歳までの医療費の無償化
いずれも出産・子育てに関し、お金を支援する形の施策ですが、子育て世代では魅力的な物が多いですよね。
こういった取り組みが自治体ではなく、日本という国で動くことを期待しています。
少子化対策について考えてみよう
当記事では少子化対策という社会問題について考えてみました。
- 子供を増やすためには結婚・出産の両面に着目する
- 子供を持たない理由の1位はお金の問題
- 結婚を増やすにはお金・時間のゆとりを持つことが必要
- 児童手当や教育の無償化の効果は限定的
- ベーシックインカムは学費も十分カバーする
- 子育て支援して出生率上昇の事例もある
今回は解決策の中に私の意見も含まれてしまいましたが、今後の少子化対策のためには少々強引な政策が必要だと感じます。
幼児教育や高等教育の無償化、育休制度の拡充も効果が無いとは思いませんが、ベーシックインカムは全てをまとめて対策できるとしてインパクトがあります。
しかし、これは私の見解です。この問題を解決するには皆さんが真剣に考え、何が必要なのか?不要なものはないか?を明確にしないといけません。
大きなテーマですが、自分ごととして改めて少子化対策について考えてみてはいかがでしょうか?
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
そんな皆さんに感謝いたします。
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